概要
「分数で割るとき、なぜ逆数を掛けるのか」を、除算の意味と具体例から整理する。
分数の除算では「割る数の逆数を掛ける」と学ぶが、なぜこの操作でよいのかが分からないと、単なる暗記になりやすい。
ここでは、\(2 \div \dfrac{2}{3} = 3\) を例に、単位をそろえて考える方法と、逆数を使って割る数を \(1\) にする方法を順に説明する。
さらに、文字を使って一般化し、逆数を掛ければよいことを数学的に証明する。
この記事の構成
- 数える単位をそろえる考え方
整数の除算との違いを踏まえ、数える単位をそろえて結果を確認。 - 逆数で割る数を1にする考え方
数値例から商を変えずに割る数を1にする性質を確認し、逆数との関係を整理。 - 一般化して確認
文字を使って分数の除算を一般化し、逆数を掛ける理屈を確認。 - 数学的な証明
等式と前提条件を明示し、逆数を掛けて得た値が唯一の商であることを証明。
数える単位をそろえる考え方
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整数同士の除算と同じ考え方
\(12 \div 3 = 4\) は、「\(12\) の中に \(3\) がいくつ含まれているか」を求める計算。\(12\) と \(3\) は、どちらも \(1\) を単位とした個数として、そのまま比べられる。
\(3\) が \(4\) つ含まれているため、答えは \(4\)。分数の除算も「いくつ含まれているか」で考えられるが、書かれた形のままでは数える単位が異なるため、整数のようにそのまま比べるのは難しい。
そこで、数える単位をそろえる。
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分数では数える単位(分母)をそろえて考える
\(2 \div \dfrac{2}{3}\) も、「\(2\) の中に \(\dfrac{2}{3}\) がいくつ含まれているか」を求める計算。
ただし、\(2\) は \(1\) を単位として数え、\(\dfrac{2}{3}\) は \(\dfrac{1}{3}\) を単位として数えているため、そのままでは個数を比べにくい。そこで、割られる数の \(2\) も、割る数と同じ \(\dfrac{1}{3}\) 単位で表す。
\[ {\small 2 = \dfrac{6}{3} } \]これで、割られる数は \(\dfrac{1}{3}\) が \(6\) 個、割る数は \(\dfrac{1}{3}\) が \(2\) 個となり、単位がそろう。
あとは \(6\) 個を \(2\) 個ずつに分ければよいため、\(3\) 組できる。\[ {\small 2 \div \dfrac{2}{3} = \dfrac{6}{3} \div \dfrac{2}{3} = 6 \div 2 = 3 } \]
逆数で割る数を1にする考え方
上記のように単位をそろえて考える方法は、理屈を理解しやすい一方で、計算のたびに分母をそろえ個数を数え直す必要があるため手順が増える。
そこで、割られる数と割る数の両方に同じ \(0\) でない数を掛けても、商が変わらない性質を利用する。
両方に割る数の逆数を掛け、割る数を \(1\) にして計算する。
※ ある数に掛けると \(1\) になる数を逆数という。例えば、\(\dfrac{2}{3}\) の逆数は \(\dfrac{3}{2}\) である。
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整数の除算で仕組みを確認
乗算と除算は互いに逆の演算である。また、割られる数と割る数の両方に同じ \(0\) でない数を掛けても商は変わらない。
この性質を使い、割る数を \(1\) にするための値を、割る数と割られる数の両方に掛ければ、商を保ったまま除算を簡単にできる。まず、\(12 \div 3 = 4\) を考える。
例えば、割られる数と割る数の両方を \(2\) 倍しても、\(24\) の中に \(6\) が \(4\) つ含まれるため、商は変わらない。\[ {\small 12 \div 3 = (12 \times 2) \div (3 \times 2) = 24 \div 6 = 4 } \]この性質を使い、割る数が \(1\) になるように、両方へ \(\dfrac{1}{3}\) を掛ける。
\[ {\small 12 \div 3 = \left(12 \times \dfrac{1}{3}\right) \div \left(3 \times \dfrac{1}{3}\right) = 4 \div 1 = 4 } \]分数の除算でも、この考え方をそのまま利用できる。
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分数の除算でも同じように考える
\(\dfrac{2}{3}\) に何を掛ければ \(1\) になるかを考える。\[ {\small \dfrac{2}{3} \times x = 1 } \]この式を満たす \(x\) は \(\dfrac{3}{2}\)。
商を変えないように、割られる数と割る数の両方へ \(\dfrac{3}{2}\) を掛ける。
\[ {\small \begin{aligned} 2 \div \dfrac{2}{3} &= \left(2 \times \dfrac{3}{2}\right) \div \left(\dfrac{2}{3} \times \dfrac{3}{2}\right) \\ &= 2 \times \dfrac{3}{2} \div 1 \\ &= 2 \times \dfrac{3}{2} \\ &= \dfrac{6}{2} \\ &= 3 \end{aligned} } \]割る数を \(1\) にすると、残る計算は割られる数へ逆数を掛ける部分だけになる。
したがって、割る数が \(0\) でない限り、その逆数を掛ければ除算できる。
一般化して確認
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分数の除算が逆数の乗算になることを確認
※ \(0\) で割る計算は定義できないため、以降は割る数を \(0\) でないものとして考える。\(a, b, c, d\) を整数とし、\(b \neq 0\)、\(c \neq 0\)、\(d \neq 0\) として、\(\dfrac{a}{b}\) を \(\dfrac{c}{d}\) で割る場合を考える。
割る数 \(\dfrac{c}{d}\) の逆数は \(\dfrac{d}{c}\) であり、互いの積は \(1\)。\[ {\small \dfrac{c}{d} \times \dfrac{d}{c} = 1 } \]割られる数と割る数の両方に \(\dfrac{d}{c}\) を掛け、割る数を \(1\) にする。
\[ {\small \begin{aligned} \dfrac{a}{b} \div \dfrac{c}{d} &= \left(\dfrac{a}{b} \times \dfrac{d}{c}\right) \div \left(\dfrac{c}{d} \times \dfrac{d}{c}\right) \\ &= \left(\dfrac{a}{b} \times \dfrac{d}{c}\right) \div 1 \\ &= \dfrac{a}{b} \times \dfrac{d}{c} \end{aligned} } \]したがって、割る数の逆数を掛ければよいことがわかる。
\[ {\small \dfrac{a}{b} \div \dfrac{c}{d} = \dfrac{a}{b} \times \dfrac{d}{c} } \]
数学的な証明
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分数の除算が逆数の乗算になることの証明
\(a, b, c, d\) を整数とし、\(b \neq 0\)、\(c \neq 0\)、\(d \neq 0\) とする。
\(b \neq 0\) と \(d \neq 0\) は二つの分数を定義するため、\(c \neq 0\) は割る数 \(\dfrac{c}{d}\) を \(0\) にしないために必要。次の等式が成り立つことを証明する。
\[ {\small \dfrac{a}{b} \div \dfrac{c}{d} = \dfrac{a}{b} \times \dfrac{d}{c} \hspace{5mm}・・・(*) } \]等式(*)の右辺を有理数 \(q\) と置く。
\[ {\small q = \dfrac{a}{b} \times \dfrac{d}{c} } \]※ 有理数とは、整数 \(m, n\) と \(n \neq 0\) を使って \(\dfrac{m}{n}\) と表せる数のこと。
ここで扱う二つの分数は有理数であり、等式(*)の右辺 \(q\) も \(\dfrac{ad}{bc}\) と表せるため有理数となる。除算は乗算の逆演算である。
したがって、\(q\) が \(\dfrac{a}{b} \div \dfrac{c}{d}\) の商であることを示すには、\(\dfrac{c}{d} \times q = \dfrac{a}{b}\) を満たし、その値が一つに定まることを示せばよい。
具体的には、次の2点を確認する。
- \(q\) が \(\dfrac{c}{d} \times q = \dfrac{a}{b}\) を満たすこと。
これにより、\(q\) が等式(*)の左辺の商になり得ることを確認する。 - この条件を満たす値が、\(q\) 以外に存在しないこと。
これにより、商の候補が \(q\) だけであり、除算の結果が一つに定まることを確認する。
上記「1.」だけでは、同じ条件を満たす別の値が存在する可能性が残る。
「2.」まで示すことで、\(q\) が等式(*)の左辺の唯一の商であり、右辺と左辺が等しいと結論づけられる。-
「1.」の証明:逆数を掛けた値が商の条件を満たすこと
上で定めた \(q\) に割る数 \(\dfrac{c}{d}\) を掛け、商の条件を満たすか確かめる。\[ {\small \begin{aligned} \dfrac{c}{d} \times q &= \dfrac{c}{d} \times \left(\dfrac{a}{b} \times \dfrac{d}{c}\right) \\ &= \dfrac{a}{b} \times \left(\dfrac{c}{d} \times \dfrac{d}{c}\right) \\ &= \dfrac{a}{b} \times 1 \\ &= \dfrac{a}{b} \end{aligned} } \]よって、逆数を掛けた値 \(q\) は商の条件を満たす。
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「2.」の証明:商の条件を満たす値がほかにないこと
商の条件を満たす別の有理数 \(r\) があると仮定する。\[ {\small \dfrac{c}{d} \times r = \dfrac{a}{b} } \]両辺に \(\dfrac{c}{d}\) の逆数 \(\dfrac{d}{c}\) を掛ける。
\[ {\small \begin{aligned} \dfrac{d}{c} \times \dfrac{c}{d} \times r &= \dfrac{d}{c} \times \dfrac{a}{b} \\ r &= \dfrac{a}{b} \times \dfrac{d}{c} \\ &= q \end{aligned} } \]よって、商の条件を満たす任意の \(r\) は \(q\) と等しくなるため、その条件を満たす値は \(q\) 以外にない。
「1.」の証明で \(q\) が商の条件を満たすこと、「2.」の証明でその条件を満たす値が \(q\) 以外にないことを示した。
したがって、等式(*)の右辺 \(q = \dfrac{a}{b} \times \dfrac{d}{c}\) が左辺の唯一の商であり、分数の除算では割る数の逆数を掛ければよいことが証明された。
- \(q\) が \(\dfrac{c}{d} \times q = \dfrac{a}{b}\) を満たすこと。
まとめ
- 逆数を使わずに考える場合、割られる数と割る数を同じ単位で表すと、個数の除算へ置き換えられる。
- 割られる数と割る数へ同じ \(0\) でない数を掛けても商は変わらないため、逆数を掛けて割る数を \(1\) にできる。
- 一般化すると、\(\dfrac{a}{b} \div \dfrac{c}{d} = \dfrac{a}{b} \times \dfrac{d}{c}\)。ただし、\(b \neq 0\)、\(c \neq 0\)、\(d \neq 0\) が必要。
- 逆数を掛けて得た値は商の条件を満たし、その値が一意であることから、分数の除算で逆数を掛ける規則が成り立つ。