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数学 - 計算の仕組み:0による除算を定義できない理由

概要

「なぜ \(0\) による除算が定義できないのか」を除算を乗算の式へ戻す流れから整理して説明する。

\(0\) による除算は、答えが無限大になるから定義できないわけではない。
乗算の式へ戻すと、商の条件を満たす値が存在しない場合と、無数に存在する場合に分かれる。
いずれの場合も商が一意に定まらないため、\(0\) による除算は定義できない。

ここでは \(6 \div 2\)、\(6 \div 0\)、\(0 \div 0\) を具体例とし、通常の除算である \(6 \div 2\) を乗算の式へ戻し、商が \(3\) に一意に定まることを確認する。
次に、\(6 \div 0\) には商が存在しないこと、\(0 \div 0\) では商が一意に定まらないことを確認する。

上記三つの具体例を整理した後、割られる数を実数 \(a\) として一般化し、数学的に証明する。
最後に \(0\) による除算と、除数を \(0\) に近づけたときの極限(\(\pm\infty\))との違いを確認する。

この記事の構成

通常の除算を基に \(0\) で除算できない理由を確認

  • \(6 \div 2\) の商が一意に定まることを確認
    まず、通常どおり計算できる \(6 \div 2\) を考え、を \(x\) と置く。

    \[ {\small 6 \div 2=x } \]

    割る数が \(0\) でないとき、除算と乗算は互いに逆の演算であり、商に割る数を掛けると割られる数に戻る。
    この関係を利用して、上の方程式の両辺に割る数の \(2\) を掛ける。

    \[ {\small (6 \div 2) \times 2=x \times 2 } \]

    左辺は、\(6\) を \(2\) で割ってから \(2\) を掛けるため、元の \(6\) に戻る。

    よって

    \[ {\small 6=x \times 2 } \]

    となる。さらに、乗法の交換法則により \(x \times 2\) を \(2 \times x\) とし、方程式の左辺と右辺を入れ替えると

    \[ {\small 2 \times x=6 } \]

    となる。

    このように、\(6 \div 2\) は、\(2 \times x=6\) を満たす \(x\) を求める計算として捉えられる。

    この方程式を満たす実数は \(x=3\) だけなので、\(6 \div 2\) の商は \(3\) に一意に定まる

  • 除算の定義を確認
    上記の具体例の通り、\(6 \div 2=3\) となるのは、\(2 \times 3=6\) が成り立つためである。

    この関係を一般化すると、除算は次のように定義できる。

    \(\boldsymbol{a \div b=x}\) とは、 \(\boldsymbol{b \times x=a}\) を満たす \(\boldsymbol{x}\) が一意に定まることである。

  • \(6 \div 0\) に商が存在しないことを確認
    仮に \(6 \div 0\) の商 \(x\) が存在すると、上記の除算の定義により、次を満たす必要がある。

    \[ {\small 0 \times x=6 } \]

    しかし、\(0\) にどのような実数 \(x\) を掛けても結果は \(0\) であり、\(6\) にはならないため成り立たない。

    したがって、\(6 \div 0\) には商が存在しない

    これは、除算の定義にある商が一意に定まるという条件に反するため、\(6 \div 0\) は定義できない。

  • \(0 \div 0\) の商が一意に定まらないことを確認
    仮に \(0 \div 0\) の商 \(x\) が存在すると、上記の除算の定義により、次を満たす必要がある。

    \[ {\small 0 \times x=0 } \]

    この方程式は、\(x=1\)(正の数)、\(x=-5\)(負の数)、\(x=0.333\ldots\)(無限小数)、\(x=\sqrt{2}\)(無理数)など、すべての実数を解にもつ。
    つまり、すべての実数が商の候補となり、商が一意に定まらない

    これは、除算の定義にある商が一意に定まるという条件に反するため、\(0 \div 0\) も定義できない。

三つの具体例を整理

ここまでの具体例では、除算を乗算の方程式へ置き換え、商の決まり方を確認した。

  • \(6 \div 2\) では、\(2 \times x=6\) を満たす商が \(3\) に一意に定まる。
  • \(6 \div 0\) では、\(0 \times x=6\) を満たす商が存在しない。
  • \(0 \div 0\) では、すべての実数が \(0 \times x=0\) を満たすため、商が一意に定まらない。

この結果から、\(0\) を除数とすると、割られる数が \(0\) でない場合は商が存在せず、\(0\) の場合は商が一意に定まらないことが分かる。
どちらの場合も除算の定義を満たさないため、\(0\) による除算は定義できない

三つの結果を図で整理すると、次のようになる。

通常の除算、0による除算で商が存在しない場合、0を0で除算して商が一意に定まらない場合の比較

一般化して確認

  • \(a \div 0=x\) を乗算の式へ戻して場合分け
    \(a\) を実数とする。
    \(a \div 0=x\) を定義するには、商 \(x\) が一意に定まり、次の方程式を満たす必要がある。

    \[ {\small 0 \times x=a } \]

    \(0 \times x\) は、\(x\) の値にかかわらず必ず \(0\) となる。
    そのため、\(a\) が \(0\) かどうかで次の二つに分かれる。

    1. \(a \neq 0\) の場合
      どの実数 \(x\) を代入しても \(0 \times x=0 \neq a\) となるため、方程式 \(0 \times x=a\) は成り立たず、商は存在しない。
    2. \(a=0\) の場合
      すべての実数 \(x\) が \(0 \times x=0\) を満たすため、商が一意に定まらない。

    \(a \neq 0\) では商が存在せず、\(a=0\) では商が一意に定まらない。
    したがって、どのような実数 \(a\) に対しても \(a \div 0\) は定義できない

数学的な証明

  • \(0\) による除算を定義できないことを証明
    任意の実数 \(a\) に対して、\(a \div 0\) を通常の実数の除算として定義できないことを証明する。
    商 \(x\) を定めるには、\(0 \times x=a\) を満たす実数 \(x\) がただ一つ存在する必要がある。

    1. \(a \neq 0\) の場合
      \(0 \times x=a\) を満たす実数 \(x\) が存在すると仮定する。
      しかし、任意の実数 \(x\) に対して \(0 \times x=0\) であるため、\(a=0\) となり、\(a \neq 0\) に矛盾する。
      よって、この場合は商が存在しない。
    2. \(a=0\) の場合
      例えば、異なる二つの実数 \(x=0\) と \(x=1\) は、どちらも方程式 \(0 \times x=0\) の解である。実際、次の等式がそれぞれ成り立つ。
      \[ {\small 0 \times 0=0 } \]
      \[ {\small 0 \times 1=0 } \]
      さらに、すべての実数 \(x\) が \(0 \times x=0\) を満たすため、商が一意に定まらない。

    すべての実数 \(a\) は \(a \neq 0\) または \(a=0\) のどちらかに当たる。
    前者では商が存在せず、後者では商が一意に定まらない。いずれも除算の定義を満たさないため、\(0\) による除算は定義できない。

  • 逆数との関係を確認
    \(b \neq 0\) のとき、実数の除算 \(a \div b\) は、\(b\) の逆数を使って \(a \times b^{-1}\) と表せる。
    仮に \(0\) の逆数となる実数 \(y\) が存在するなら、次の方程式を満たす必要がある。

    \[ {\small 0 \times y=1 } \]

    しかし、\(0 \times y\) は常に \(0\) となるため、この方程式を満たす実数 \(y\) は存在しない。
    これは、前項の証明で \(a=1\) とした場合に商が存在しないことと同じ結論であり、別の理由ではない。

\(0\) による除算と極限の違い

ここでは、\(0\) による除算と、除数を \(0\) に近づける極限が異なることを確認する。

  • \(1 \div 0\) は無限大ではない
    上記で示したとおり、\(1 \div 0=x\) と仮定すると、商 \(x\) は次の方程式を満たす必要がある。

    \[ {\small 0 \times x=1 } \]

    しかし、この方程式を満たす実数 \(x\) は存在しない。
    したがって、\(1 \div 0\) は定義できないため、正または負の無限大(\(\pm\infty\))にならない。

  • 除数を \(0\) に近づける極限は、\(\pm\infty\) への発散の様子を示している
    \(0\) より大きい除数を \(0.1\)、\(0.01\)、\(0.001\) と \(0\) に近づけると、次のように商は大きくなる。

    \[ {\small \dfrac{1}{0.1}=10,\quad \dfrac{1}{0.01}=100,\quad \dfrac{1}{0.001}=1000 } \]

    この変化を極限では次のように表す。

    \[ {\small \lim_{t \to 0^{+}} \dfrac{1}{t}=+\infty } \]

    反対に、\(0\) より小さい除数を \(-0.1\)、\(-0.01\)、\(-0.001\) と \(0\) に近づけると、次のように商は小さくなる。

    \[ {\small \dfrac{1}{-0.1}=-10,\quad \dfrac{1}{-0.01}=-100,\quad \dfrac{1}{-0.001}=-1000 } \]

    この変化は次のように表す。

    \[ {\small \lim_{t \to 0^{-}} \dfrac{1}{t}=-\infty } \]

    記号 \(\lim\) は \(\mathrm{limit}\)(極限)の略である。
    \(t \to 0^{+}\) は \(t\) を \(0\) より大きい側から \(0\) に近づけること、\(t \to 0^{-}\) は \(0\) より小さい側から近づけることを表す。

    どちらの場合も、除数 \(t\) は限りなく \(0\) に近づいているだけで、決して \(0\) にはならない。

    つまり、これらの極限は \(0\) で除算した結果ではなく、除数を限りなく \(0\) に近づけたときの \(1/t\) の変化の様子(正または負の無限大へ発散)を表している。

まとめ

  • 除算 \(a \div 0=x\) を定義するには、\(0 \times x=a\) を満たす商 \(x\) がただ一つ存在する必要がある。
  • \(a \neq 0\) では条件を満たす商が存在せず、\(a=0\) ではすべての実数が商の候補となる。
  • \(0\) を掛けると元の値を一つに復元できず、商が一意に定まらないため、\(0\) による除算は定義できない。
  • \(0\) に逆数が存在しないことも、\(0 \times x=1\) を満たす実数が存在しないという同じ問題を表している。
  • \(t\) を正の側から \(0\) に近づけると \(1/t\) は \(+\infty\)、負の側から近づけると \(-\infty\) へ発散するが、どちらも \(1 \div 0\) の商を表していない。

参考文献

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