概要
「負の数同士の積がなぜ正になるのか」を具体例と分配法則から整理する。
負の数の乗算では「負の数同士を掛けると正になる」と学ぶが、その理由まで考える機会は少なく、なぜ正になるのかを説明しようとすると意外に難しい。
その理由を具体的に捉えるため、まず積の変化から結果を予測し、次に分配法則を使って、なぜ正の値に定まるのかを確認する。
ここでは、\(1+(-1)=0\) という関係と分配法則を使い、\((-2) \times (-1) = 2\) になる理由を確認して最後に文字を使って一般化し、負の数同士の積が正になることを数学的に証明する。
この記事の構成
- 積の変化から考える
繰り返し加算の限界を確認し、既知の積の変化から負の数同士の積を予測。 - 分配法則から考える
分配法則を前提に、負の数同士の積が一つに決まる仕組みを確認。 - 一般化して確認
数値例の \((-2) \times (-1)=2\) を、任意の正の整数 \(a,b\) へ一般化。 - 数学的な証明
分配法則と反数の性質から、負の数同士の積が正になることを証明。
積の変化から考える
以下では、\(A \times B\) の左側にある \(A\) を掛けられる数、右側にある \(B\) を掛ける数として説明する。
数の乗法では交換法則によって \(A \times B=B \times A\) となるが、どちらを固定しどちらを変えるかを明確にするため、あえてこの呼び分けを用いる。
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掛ける数が正の整数なら繰り返し加算で考えられる
\((-2) \times 3\) では、掛けられる数 \(-2\) を、掛ける数 \(3\) が表す回数だけ繰り返し足すという形で説明できる。\[ {\small (-2) \times 3 = (-2) + (-2) + (-2) = -6 } \] -
掛ける数が負の場合は扱えない
繰り返し加算では、掛ける数が、掛けられる数を足す回数を表す。
この回数は \(0\) 以上の整数で数えるため、\((-2) \times (-1)\) のように掛ける数が負の場合を扱えない。
負の数を掛ける計算は、積の変化や分配法則から考える必要がある。 -
\(-2\) を固定して掛ける数を減らす
掛けられる数を \(-2\) に固定し、掛ける数を \(3\) から一つずつ減らして積を並べる。\[ {\small \begin{aligned} (-2) \times 3 &= -6 \\ (-2) \times 2 &= -4 \\ (-2) \times 1 &= -2 \\ (-2) \times 0 &= 0 \end{aligned} } \]ここまでの範囲では、掛ける数が \(1\) 減るたびに、積は \(2\) ずつ増えている。
同じ変化が負の数の範囲でも続くと仮定する。
よって、\[ {\small (-2) \times (-1) = 2 } \]と予測できる。
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積の変化をグラフで確認
\(x=0,1,2,3\) の範囲では、\(y=(-2) \times x\) の値を同じ数を繰り返し足す方法で求められる。
これらの点を結び、同じ変化を負の数の範囲まで延長すると、次のグラフになる。
この延長では、\(x\) が \(1\) 減ると \(y\) は \(2\) 増えるため、\(x=-1\) の位置で \(y=2\) と予測できる。
ただし、既知の点を直線で延長しただけでは、負の数の範囲でも実際にその値を取るとは証明できない。
\((-2) \times (-1)\) が必ず \(2\) になる理由は、次の分配法則から確認する。
分配法則から考える
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分配法則を使って未知の積を求める
※ ここでは、正負の数でも分配法則が成り立つことを実数の演算の基本的な性質として前提にする。
分配法則そのものの成り立ちについては扱わない。この法則を保つと \((-2) \times (-1)\) がどの値に決まるかを確認する。
求めたい \((-2) \times (-1)\) を含む式を作るため、\(1 + (-1) = 0\) の両辺に \(-2\) を掛ける。
\[ {\small (-2)\{1 + (-1)\} = (-2) \times 0 = 0 } \]左辺を分配法則で二つの積に分ける。
\[ {\small (-2) \times 1 + (-2) \times (-1) = 0 } \]\((-2) \times 1=-2\) なので、分配後の式は次のようになる。
\[ {\small -2 + (-2) \times (-1) = 0 } \]ここで \(-2\) との和が \(0\) になる値は、\(2\) だけである。
実際、この式の両辺に \(2\) を足すと、\[ {\small \begin{aligned} -2 + (-2) \times (-1) + 2 &= 0 + 2 \\ (-2) \times (-1) &= 2 \end{aligned} } \]となる。
したがって、分配法則を保つには、未知の積 \((-2) \times (-1)\) を \(2\) とする必要がある。
一般化して確認
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分配法則の考え方を一般化
\(a,b\) を正の整数とする。
\(b+(-b)=0\) の両辺に \(-a\) を掛ける。\[ {\small (-a)\{b+(-b)\} =(-a) \times 0 =0 } \]左辺を分配法則で二つの積に分ける。
\[ {\small (-a)b+(-a)(-b)=0 } \]\(b\) は正の整数なので、\((-a)b\) は \(-a\) を \(b\) 回足す積となり、\((-a)b=-ab\) である。
したがって、次の式になる。\[ {\small -ab+(-a)(-b)=0 } \]\(-ab\) との和が \(0\) になる値は、\(ab\) だけである。
よって、\[ {\small (-a)(-b)=ab } \]となり、分配法則で確認した数値例を任意の正の整数 \(a,b\) へ一般化できる。
数学的な証明
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負の数同士の積が正になることの証明
\(a,b\) を正の実数とする。
このとき、次の等式が成り立つことを証明する。\[ {\small (-a)(-b) = ab \hspace{5mm}・・・(*) } \]等式(*)を示すには、\((-a)(-b)\) の値を求める必要がある。
\(b+(-b)=0\) の両辺に \(-a\) を掛けると、次の関係が成り立つ。\[ {\small (-a)\{b+(-b)\}=(-a) \times 0=0 } \]左辺の \((-a)\{b+(-b)\}\) に分配法則を使うと、次の式になる。
\[ {\small (-a)b+(-a)(-b)=0 } \]この式から、\((-a)(-b)\) は、\((-a)b\) との和を \(0\) にする値だと分かる。
その値を求めるには、まず \((-a)b\) が何に等しいかを明らかにする必要がある。
そこで、最初に \((-a)b=-(ab)\) を示す。
次に \((-a)b+(-a)(-b)=0\) を示すと、\((-a)(-b)\) は \(-(ab)\) との和を \(0\) にする値だと分かる。
\(-(ab)+ab=0\) であるため、\((-a)(-b)=ab\) となり、等式(*)を導ける。そのため、次の2点を順に示す。
- \((-a)b=-(ab)\) となること。
- \((-a)b+(-a)(-b)=0\) から、\((-a)(-b)=ab\) となること。
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「1.」の証明:負の数と正の数の積
\((-a)b\) が何に等しいかを確認する。
\(ab\) と \((-a)b\) は共通して \(b\) を掛けているため、分配法則を使って \(b\) をくくる。\[ {\small \begin{aligned} ab+(-a)b &= \{a+(-a)\}b \\ &= 0 \times b \\ &= 0 \end{aligned} } \]この計算から、\(ab\) と \((-a)b\) を足すと \(0\) になることが分かる。
\((-a)b\) は \(ab\) の反数である。
※ ある数と足した結果が \(0\) になる数を反数という。
その値を等式で確かめるため、\(ab+(-a)b=0\) の両辺から \(ab\) を引く。\[ {\small ab+(-a)b-ab=0-ab } \]したがって、
\[ {\small (-a)b=-(ab) } \] -
「2.」の証明:負の数同士の積
\((-a)b\) と \((-a)(-b)\) の和へ分配法則を使う。\[ {\small \begin{aligned} (-a)b+(-a)(-b) &=(-a)\{b+(-b)\} \\ &=(-a)\times0 \\ &=0 \end{aligned} } \]この計算から、\((-a)b\) と \((-a)(-b)\) の和が \(0\) になることが分かる。
したがって、\((-a)(-b)\) は \((-a)b\) の反数である。
「1.」より \((-a)b=-(ab)\) なので、\((-a)(-b)\) は \(-(ab)\) の反数である。
\(-(ab)\) の反数は、符号を反対にした \(-\{-(ab)\}\) と表せる。
これは \(ab\) に等しい。
よって、\[ {\small \begin{aligned} (-a)(-b) &=-\{-(ab)\} \\ &=ab \end{aligned} } \]が成り立つ。
以上のとおり、「1.」では一方だけが負の数である積を確認し、「2.」ではその積の反数を求めた。
したがって、\(a,b>0\) ならば \(ab>0\) であるため、等式(*)が成り立ち、負の数同士の積は正になることが証明された。
まとめ
- 同じ数を繰り返し足す考え方では、負の数を掛ける計算までそのまま説明できない。
- 既知の積の変化をグラフで延長すると結果を予測できるが、それだけでは負の数同士の積を証明できない。
- 分配法則から \(-2+(-2) \times (-1)=0\) となるため、\(-2\) との和を \(0\) にする未知の積は \(2\) でなければならない。
- 分配法則と反数の性質から、正の実数 \(a,b\) についても \((-a)(-b)=ab>0\) が成り立つ。