概要
「なぜ \(0\) 以外の数を \(0\) 乗すると \(1\) になるのか」を具体例と指数法則から整理して説明する。
累乗を「指数が表す個数だけ掛け合わせる計算」と考えるだけでは、指数が \(0\) の場合に答えが \(1\) になる理由までは見えてこない。
ここでは \(2^3=8\)、\(2^2=4\)、\(2^1=2\) という変化から \(2^0\) の値を考える。次に、\(2^2=1\times2\times2\) のように \(1\) を出発点に累乗を作る見方を示し、\(2^0=1\) となる理由を指数法則で確認する。
最後に一般化して確認し、数学的に証明する。
この記事の構成
- 指数の変化と乗法の単位元から考える
\(2^3\) から \(2^{-2}\) までの変化と、乗法の単位元から底の個数を捉える方法で \(0\) 乗を確認。 - 指数法則から0乗の値を確認
\(2^0\) を未知の値とし、指数法則を0乗まで保つために必要な値を確認。 - 一般化して確認
底を0以外の実数 \(a\) に置き換え、商の指数法則から \(a^0\) の値を確認。 - 数学的な証明
積の指数法則を0乗まで拡張する条件から、\(a^0\) が1に一意に定まることを証明。
指数の変化と乗法の単位元から考える
指数の変化と乗法の単位元という二つの見方から \(0\) 乗の値を直感的に捉える。
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指数を \(1\) ずつ減らした変化から確認
\(2^3\) は、底の \(2\) を \(3\) 個掛け合わせた積を表す。
このとき、\(2\) を底、掛け合わせる底の個数を表す \(3\) を指数という。\[ {\small 2^3=2 \times 2 \times 2=8 } \]\(2^3=8\)、\(2^2=4\)、\(2^1=2\) を順に並べると、指数を \(1\) 減らすたびに、値を底の \(2\) で割っている。
この変化を \(0\) と負の指数まで延長すると、次のように並ぶ。\[ {\small \begin{aligned} 2^3&=8 \\ 2^2&=8 \div 2=4 \\ 2^1&=4 \div 2=2 \\ 2^0&=2 \div 2=1 \\ 2^{-1}&=1 \div 2=\dfrac{1}{2} \\ 2^{-2}&=\dfrac{1}{2} \div 2=\dfrac{1}{4} \end{aligned} } \]ここで正の指数と負の指数の間にある \(2^0\) は、\(1\) と予測できる。
\(2^{-1}=\dfrac{1}{2}\) と \(2^{-2}=\dfrac{1}{4}\) は、指数を \(1\) 減らすたびに底の \(2\) で割る変化を、負の指数まで延長した値である。
この並びは \(2^0\) の値を考える手掛かりになるが、値が \(1\) に定まる理由は指数法則を使って確認する。
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乗法の単位元から確認
実数 \(a\) に \(1\) を掛けても、値は変わらない。\[ {\small a \times 1=1 \times a=a } \]このように、ある演算を行っても元の値を変えない数を単位元という。
乗算では \(1\) が単位元となる。ここでは、\(a\) を \(0\) 以外の実数とする。
指数が \(0\) 以上の整数の場合、累乗は、乗法の単位元 \(1\) を出発点に、指数が表す回数だけ底の \(a\) を掛けるものとして捉えられる。\[ {\small \begin{aligned} a^3&=1 \times a \times a \times a \\ a^2&=1 \times a \times a \\ a^1&=1 \times a \\ a^0&=1 \end{aligned} } \]\(a^3\) は単位元 \(1\) に \(a\) を \(3\) 回、\(a^2\) は \(2\) 回、\(a^1\) は \(1\) 回掛けた値となる。
\(a^0\) では \(a\) を一度も掛けないため、出発点の単位元 \(1\) がそのまま残る。このように、底の \(a\) が因子として一つも現れない積を空積といい、その値を乗法の単位元 \(1\) と定める。
この見方により、\(a^0=1\) という定義を直感的に捉えられるが、それ自体を独立した証明として用いるものではない。
指数を減らす並びは、\(0\) 乗の値が \(1\) になることを変化から捉える見方である。
一方、乗法の単位元から見ると、底を一度も掛けない \(0\) 乗で \(1\) が残ることを直感的に捉えられる。
いずれも理解を助ける見方であり、値が \(1\) 以外に選べないことは次の指数法則から確認する。
指数法則から0乗の値を確認
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正の整数乗で成り立つ指数法則
\(2^3\) と \(2^2\) を掛けると、底の \(2\) を合計 \(5\) 個掛け合わせることになる。\[ {\small \begin{aligned} 2^3 \times 2^2 &=(2 \times 2 \times 2)\times(2 \times 2) \\ &=2^5 \end{aligned} } \]この関係を正の整数 \(m,n\) で表すと、次の積の指数法則が成り立つ。
\[ {\small 2^m \times 2^n=2^{m+n} } \] -
指数法則を0乗まで拡張
\(2^0\) として定める値を実数 \(x\) と置く。正の整数乗で成り立つ積の指数法則を指数 \(0\) まで同じ形で保つには、次の関係が必要になる。
\[ {\small 2^3 \times 2^0=2^{3+0}=2^3 } \]\(2^0=x\)、\(2^3=8\) を代入すると、次の方程式になる。
\[ {\small 8x=8 } \]両辺を \(8\) で割ると、\(x=1\) に一意に定まる。
したがって、\(2^0=1\) となる。\(2^0\) を乗法の単位元 \(1\) と定めることで、指数を \(0\) まで広げても積の指数法則を同じ形で保てる。
これは、前項で単位元から直感的に捉えた結果とも一致する。ここでは、\(2^0=1\) を先に使って指数法則を確認しているわけではない。
正の整数乗で成り立つ指数法則を \(0\) 乗まで拡張するために、\(2^0\) に必要な値を求めている。
一般化して確認
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\(0\) 以外の実数の \(0\) 乗を確認
底を \(0\) 以外の実数 \(a\) とし、\(m,n\) を正の整数とする。\(0\) 以外の数を同じ数で割ると \(1\) になるため、次の等式が成り立つ。
\[ {\small \dfrac{a^m}{a^m}=1 } \]\(m>n\) のとき、商の指数法則は次のように表せる。
\[ {\small \dfrac{a^m}{a^n}=a^{m-n} } \]この法則を \(m=n\) の場合まで同じ形で保つと、次のように表せる。
\[ {\small \dfrac{a^m}{a^m}=a^{m-m}=a^0 } \]同じ \(\dfrac{a^m}{a^m}\) が \(1\) と \(a^0\) の両方に等しいため、\(a^0=1\) となる。
\[ {\small a^0=1 \qquad (a \neq 0) } \]条件 \(a \neq 0\) が必要なのは、分母となる \(a^m\) が \(0\) 以外の数である必要があるためである。
底が \(0\) 以外なら、負の数や分数でも同じ関係が成り立つ。
\[ {\small (-2)^0=1,\qquad \left(\dfrac{2}{3}\right)^0=1 } \] -
負の指数への拡張
指数を \(1\) 減らすたびに底で割る考え方を、底が \(2\) 以外の場合にも広げる。
\(0\) 以外の実数 \(a\) と正の整数 \(n\) に対して、\(a^{-n}=\dfrac{1}{a^n}\) と定める。
数学的な証明
前項では商の指数法則から一般化した。
ここでは、積の指数法則を用い、\(a^0\) の値が \(1\) に一意に定まることを証明する。
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0以外の数の0乗が1に一意に定まることを証明
\(a\) を \(0\) 以外の実数とする。正の整数乗で成り立つ積の指数法則を、同じ形のまま指数 \(0\) まで拡張する。
ここでは、その拡張が可能であり、\(a^0\) の値が \(1\) に一意に定まることを示す。このとき、次の等式が成り立つことを証明する。
\[ {\small a^0=1 \hspace{5mm}・・・(*) } \]積の指数法則を保つために等式 \((*)\) が必要であり、かつ、この定義が指数法則と矛盾しないことを示すため、次の2点を順に確認する。
- 積の指数法則を保つなら、\(a^0\) の値は \(1\) に一意に定まること。
- \(a^0=1\) と定めると、指数 \(0\) を含む場合も積の指数法則と矛盾しないこと。
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「1.」の証明:値が1に一意に定まること
\(a^0\) として定める値を実数 \(x\) と置く。積の指数法則で一方の指数を \(1\)、もう一方を \(0\) とすると、次の等式になる。
\[ {\small a^1 \times a^0=a^{1+0}=a^1 } \]\(a^0=x\)、\(a^1=a\) を代入すると、次の方程式になる。
\[ {\small ax=a } \]\(a \neq 0\) なので、方程式の両辺を \(a\) で割ることができる。
\[ {\small \begin{aligned} \dfrac{ax}{a}&=\dfrac{a}{a} \\ x&=1 \end{aligned} } \]方程式 \(ax=a\) を満たす \(x\) は \(1\) だけなので、\(a^0\) は \(1\) に一意に定まる。
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「2.」の証明:指数法則と矛盾しないこと
\(a^0=1\) と定め、\(m\) を \(0\) 以上の整数とする。\[ {\small \begin{aligned} a^m \times a^0 &=a^m \times 1 \\ &=a^m \\ &=a^{m+0} \end{aligned} } \]よって、\(a^0=1\) と定めれば、指数に \(0\) を含む場合も積の指数法則が成り立つ。
以上のとおり、「1.」では積の指数法則を保つために \(a^0\) が \(1\) に一意に定まることを示し、「2.」ではその定義が指数法則と矛盾しないことを確認した。
したがって、\(0\) 以外の実数 \(a\) の累乗を、積の指数法則を保って指数 \(0\) まで拡張するとき、等式 \((*)\) が成り立つ。
まとめ
- \(2\) の累乗では、指数を \(1\) 減らすたびに値を底の \(2\) で割るため、\(2^3\) から \(2^{-2}\) までを並べると \(2^0=1\) と予測できる。
- 乗法の単位元 \(1\) を出発点に累乗を作ると、底を一度も掛けない \(a^0\) では \(1\) がそのまま残る。
- 底が \(0\) 以外のとき、正の整数乗で成り立つ積の指数法則を \(0\) 乗まで保つには、\(a^0\) が乗法の単位元 \(1\) でなければならない。
- 積の指数法則を \(0\) 乗まで保つと、\(a \neq 0\) ならば方程式 \(ax=a\) の解は \(x=1\) に一意に定まるため、\(a^0=1\) となる。